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滋賀県立大学の建築学科はどんなところ?現役学生に聞いてみよう。

建築を学べる大学への進学を考えているけれど、日本全国に大学がありすぎてわからない…!「建築学科」といっても、大学によってその内容はさまざま。

今回は建築をめざす高校生のみなさんの大学選びの参考になればと思い、各大学の先輩たちにそれぞれの大学の特徴を教えてもらいます。今回は滋賀県彦根市にある滋賀県立大学。

滋賀県立大学、在籍中の3年生・寺本圭吾さん、野瀬晃平さんに、大学生活についてやカリキュラム、特徴について聞いてきました。

・建築学科への受験を検討してる

滋賀県立大学がどんな大学か知りたい

そんな学生さんは読んでみてください。

▼取材動画は下からご覧ください▼

自己紹介と簡単に経歴を教えてください。

左から、滋賀県立大学 環境科学部 環境建築デザイン学科の寺本圭吾さんと野瀬晃平さん

寺本:はじめまして、寺本圭吾です。

高校時代は部活動に励み、進路希望として考えていたのは工学部でした。実は建築の道に進むという考えはなく、消去法で選びました。

建築との関わりといえば、親が建設関係の会社に勤めていることくらいです。

野瀬:はじめまして、野瀬晃平です。

私も高校時代は部活動に励んでいました。もともと家を見るのが好きという自覚はあったのですが、周囲も同じだと思っていました。

でも実は私のように家に興味を持つ人ばかりではないことを知り、その時になんとなく「建築に進んでみようかな」と思いました。

滋賀県立大学はどんなところ?特徴は?

大学の周りには池や田んぼ、畑などがあって穏やかな雰囲です。

他の大学と比較すると「人が多い」「息苦しい」などと感じることがないので、のんびりと学べるのが滋賀県立大学の特徴かと思います。

どうして滋賀県立大学の建築学科を選んだの?

もともと私立の大学に進むことは考えていなかったので、国公立大学の1つとして滋賀県立大学が選択肢にありました。そのなかでも近畿圏内で…と考えた際、自分にあった学力レベルだったことから滋賀県立大学を選びました。

また入試には前期・後期というものがあるのですが、前期入試で他大学を不合格になった人が後期入試のスケッチで、滋賀県立大学を受けるということも多いと聞きます。

他にも大学自体(建物)が綺麗だったということで、ここで学びたいという意欲が強まりました。個人的には、実家が関西で通いやすいという点も理由の1つでした。

滋賀県立大学の建築学科の特徴は?

他の大学では工学部建築学科が多いように思いますが、滋賀県立大学は環境科学部の建築デザイン学科です。主に環境系を学ぶので、授業内容も「環境・デザイン」が多いです。

一方で「構造・設備」においては、少ないかなといった印象があります。

また滋賀県立大学の建築学科では、男女比は1:1程度。ワークショップなどで先輩と関わる機会が多いため、先輩とは必然的につながれる環境です。

滋賀県立大学の建築学科のカリキュラムは?

櫻本:ここからは寺本圭吾さんと野瀬晃平さんの体験として、滋賀県立大学3年生までのカリキュラムについてお聞きします。

1年生:ものづくりの楽しさ」「つらさ」を知る

美術館模型美術館模型

1年生で一番印象に残っている授業は「イメージ表現法」という授業でした。たとえば段ボールで椅子を作るといった創作系の授業では、想像力や主体的な取り組みが必要です。

能動的に作業ができる人にとっては楽しい授業ではありますが、一方で「作業量が多い、プレッシャーを感じる」なんて感じる人もいるでしょう。

カリキュラムとしては図面のトレースやパースの授業が後期に始まるので、そこで建築の基礎知識を学習します。教えてもらうというよりも、課題に対して自ら動くことが求められます。

またこれは余談ですが、建築学科では自分の作品に自信がある人が多く、個性的考え方に触れられるので魅力的です。つくるということを楽しめる人には向いていると思います。

2年生:設計演習が始まる

2年生からは、設計演習が始まります。他大学では住宅設計が多いらしいのですが、広い視野(公共性)を意識して設計するという意図から、滋賀県立大学ではまず公民館を設計するという課題が与えられました。

設計課題の流れとしては、

  • 前期:公民館、住宅
  • 後期:集合住宅、美術館 
  • 最終:リノベーション課題(細かいディテールなどを学ぶ)

といった感じです。

美術館の立体図(CG)

また2年生の授業では、環境系の講義が増えます。環境フィールドワーク(環境系の他学科講義)では、建築と離れた視点から環境を学びました。

環境に対しての意識を持つという意図があるのか、実際に「建築の事例と一緒に環境について学習する」ことが多くあります。

3年生:設計演習・講義共に深く学ぶ

3年生では、以前と変わらず設計演習が中心です。加えて、構造についての授業も増えていきます。

従来であればグループ課題が与えられていましたが、今年は新型コロナウイルスが流行したこともあり、コロナ禍における視点で住宅を設計するという課題に変わりました。

寺本圭吾 設計演習III 最終発表

さまざまな視点から「コロナでどのようにライフスタイルが変わっていくのか」ということを意識して、作品事例を見ました。今年の授業では、貴重な体験ができたと思います。

また3年生になると設計課題が前期で終了し、後期からは研究室に配属されます。ここから専門的な学習へと移行していきますね。

この授業がおもしろい!

設計演習4(3年生後期に受講できる)は、授業のなかでも特に面白かったですね。もちろん設計することも楽しいのですが、他人の設計課題を見られるというところがポイントです。

たとえば設計演習4で講師の建築家と生徒で「大阪城」「滋賀県の比叡山」を探訪し、フィールドワークを行いました。同行してくれる建築家の視点を間近で見られることは貴重な体験・学習です。

毎年別の建築家が同行してくれますし、授業のような感覚がないことも嬉しいポイントでした。

また建築学科以外の講義を受けることができるため、服飾関係や生活デザインなどの授業も普段と違う内容で面白いです。

他の学科の講義といえば「環境フィールドワーク」や「フィリピンでの現地ワークショップ」なども行いましたね。

「環境フィールドワーク」では、竹を使ったモニュメントを学生自身が考えて作成しましたし、長期休暇をつかった「フィリピンでの現地ワークショップ」では、実際に足を運んだからこそのインスピレーションを得られました。

図面作成だけではなく、実際に自分でつくる演習授業もあります。

どんな設計課題がある?設計課題って難しい?

設計課題は、2~3年生の間に「公民館・住宅・集合住宅・美術館・リノベーション課題・グループ課題(今年はコロナ禍における住宅課題)」がありました。

設計課題では、規模が大きいものや身近でないものが難しく感じます。

たとえば規模が大きい「集合住宅」は1つ1つの細かな設定部分まで考えるため、大変でした。また身近でない「美術館」は普段見えない部分(スタッフの動線など)を読み取ることが難しく、利用者全員が快適に利用できる建物をつくるのは難しかったです。

授業、課題以外で取り組んでいることはある?

授業以外ではNEXTAという関西の建築学生の団体と合同で、建築合宿などの学外活動を行っていました。学外の団体に入ったきっかけは、他の大学や人に興味を持ったからです。

滋賀県立大学と他大学の違いを知ることで、改めて意欲的に活動できたことがよかったと思うポイントです。

他には、自分の大学と地域の建設会社との繋がりを作るという団体を立ち上げて活動しています。また、学生が参加できる学外の建築コンペに参加することもありました。

どんな研究室がある?どんな教授がいる?

私は「構造デザイン」を専門とした研究室に所属しています。

基本の計画設計から実施設計までを学び、竹や木など生活の身近にある材料を使って新しい工法を考えるということを学んでいます。環境という枠のなかの構造デザインを学んでいる感覚です。

現在は「環境工学の熱・光・風など」を学ぶ研究室に所属しており、たとえば光や色に対して人間がどのように反応するのか観察しました。

他にも、滋賀県立大学には幅広い内容の研究室があります。意匠・構造・環境・ランドスケープ・歴史など教授の経歴も華やかで、生徒の選択肢は広いです。

先輩はどんなところに就職してる?

先輩は施工管理が多く、個人の設計事務所もいますね。準大手ゼネコンに就職する方もいました。

他にはハウスメーカーなどが多いですね。

私の場合は、大きなビル等ではない公共建築や小さな規模の建築に携わりたいので組織設計事務所を考えています。他には住宅やインテリア、住宅設計か施工管理などの業種も考えています。

大学院へ進学する人はいる?

基本的に少ないです。2~3割くらいといった感じで、内部進学の方が多いです。

ちなみに、他大学へ進学する人は1割くらいです。

滋賀県立大学建築学科の楽しいところ、大変なところ

建築学科に入ってよかったところは、先輩後輩の縦の繋がりや軸がしっかりしているところです。1学年あたり50人程度なので、同級生との距離が近く親しみやすいです。

また製図室を使える時間も長く、2年生からは自分の席もあるので制作活動を行いやすい環境です。

余談ですが、建築学科とデザイン学科の人たちの間で恋愛に発展することもありますね(笑)

受験生へのアドバイス

興味を持ったらまず行動してみること悩みすぎずに飛び込んでみることが大切だと思います。入ってみると、高校時代に考えていたことと違う楽しい面が出てきますよ。

もちろん大学選びも重要なのですが「入学してからどう行動するか」が、本当に大切なことだと思います。

あ、ちなみに駅からは遠いので注意したほうがいいです(笑)

自転車で20分、バスで20~30分、徒歩だと1時間程度かかります。

滋賀県内に住んでいる人は実家から通うことが多いのですが、大阪県内に住んでいるのであれば下宿をおすすめします。

おわりに

寺本圭吾さん、野瀬晃平さんどうもありがとうございました!

ぼくは巨匠になりたい。の更新情報は公式LINEから受けとれます。こんな所に取材して欲しい、こんなことが聞きたいなどの声も書き込んでもらえると嬉しいです。

インタビュアー:櫻本聖成

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